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【発掘!地域の光る星 第1弾】伝統技法で若い人材を育てる達人!

 

川島町の“人”に着目をしようと思い、第一弾は黄綬褒章(おうじゅほうしょう)を令和3年に授与された八ツ保地区の『家の巧()』宮前守さんをご紹介。

黄綬褒章』とは?

農業、商業、工業などの業務で他の模範となるような技術や業績を有する個人や団体に授与される。

宮前守さんは、宮前家4代目の大工さん。

初代は、旧八ツ保小学校(現つばさ北小学校)の講堂を建て(今でも柱に名前が書かれています)、二代目は二階建ての大きな旧八ツ保中学校を建てたそうです。

おばあさんに「大工になれと可愛がられながら刷り込まれました()」とおっしゃいますが、宮前さんのお人柄、考え方が、黄綬褒章を受賞するまでになったのだと、お話を伺いながら深く感銘を受けました。

 

現在62歳。19歳から大工になり、大工歴43年大ベテランです。

一般的に、宮大工と建築大工と分類されるのですが、建築大工の中でも難しい伝統技法をお持ちの宮前さん。この伝統技法が出来る大工さんは、日本に100人いるかいないかの世界。その世界へ入った宮前さんはどんな職人さんであり経営者なのでしょうか。

 

【職人の世界】

三代目の親父の時代は、空前の建築ブーム。大工と農家の仕事で忙しく、職人気質で無口な親父は何も教えてくれませんでした。自分達は学校教育で育ったので、先生から教われば出来るようになる、簡単な考え方でした。けれども、職人の世界は「見て覚えろ」なので誰も教えてくれない。だから、感の悪い奴はずっと出来ないし、感のいい奴はどんどん伸びていく。それが職人の世界でした。

はじめは、何も出来ませんでした。カンナ削りすら出来ない小僧でした。

「なんでカンナは切れるんだろう?なんで研いだら切れるんだろう?」

そんなところから始まってます。

「どうして?なんで?」と自分で追求していく人が伸びる世界なんです。

 

29歳での出会い】

全国65万人からなる全建総連(全国建設労働組合総連合)という青年部の組合に加入した29歳。そこで、青年競技大会という全国大会に、第1回から埼玉代表として出場していた川島町の大工さんに出会い「大会に出てみないか」と声を掛けられたのが始まりでした。

競技大会に初めて出場したのが、第5回岡山大会。

初出場にも関わらず、なんと『敢闘賞』を受賞し、自信が付きました。

 

【挑戦が始まる】

6回福島大会では、自分が指導し一緒に出場した後輩が銅賞を受賞し、自分は策を練ったがそれが失敗し、時間内に組み立てできず、審査すらしてもらえませんでした。それはそれは悔しくて、非常に落ち込みました。

翌年の第7回大会では、埼玉県の予選も通らず。

この悔しい想いから、「どうせやるなら、12番を取るぞ!!」と、後輩と毎日毎日課題製作の練習しました。

その結果・・・

8回、9回、10回大会で連続銀賞受賞。

そして、35歳で出場した第11回徳島大会で、念願の金賞を受賞しました!!!

 

そして、実はこの時、川島町内の同級生が同じ組合にいたので、「一緒に練習しようぜ!」と共に課題練習に取り組み、全国大会で金銀銅を総なめしたんです!!!

これは町でも話題になり、当時、かわじま広報にも載ったんですよ!

 

また、一級技能士の技能グランプリ大会では、第16回、17回、18回、20回大会に出場し、銀賞を2回受賞しました。

    

 

【目指すは1番!その理由は・・・】

大会に出る人はみんな金賞を目指してるので、2番じゃダメなんですよ。

1番じゃなきゃダメなんです。2番じゃ話題にもならない。

所詮2番。1番を目指さないと。 

 

【自分の使命】

現在は、育成にも力を入れ、技能五輪全国大会やグランプリ大会など数々の大会の審査員もしています。

うちには青年競技大会で金賞を受賞した弟子が2名いて、1名は技能グランプリ大会の金賞を受賞しました。

自分を超えた弟子がいるんですよ。超えてくれていい。いずれ「現代の名工」(宮前さんは平成30年度受賞)に選ばれ、黄綬褒章も頂けるでしょう。自分が賞をもらえれば、「俺も師匠のようになれる!」という彼らの目標なるんですよ。例えば、黄綬褒章を断ってしまうと弟子たちの目標にならない。「親方が貰えたんだから、俺もそこまでいける!」そういう氣持ちでやってもらった方がいいんです。“大木の下に木は育たない”というけれど、自分は大木でもないし、弟子たちにはどんどん大きくなって欲しい。

自分は『ものつくり大学』の非常勤講師もしています。

賞を受賞したうちの弟子2名も、同じく講師をしています。

彼らは、数々の実績と訓練と指導員資格を取得し、そこで初めて、彼らを講師として大学に推薦できるんです。

その弟子たちは元々『ものつくり大学』の生徒なんです。

教え子を弟子にして育て、大学の講師にもした。

非常にいいパターンだと思います。なかなか母校で教えることはできない。

それをやってくれています。今も大学生でいい子がいれば、弟子に引っ張ってきますよ。

 

【夢:未来予想図① 弟子たちが食える世界を作り、日本を良くする!】

弟子たちが食える世界をどう作ってあげるかです。

仕事ができる凄い人はたくさんいます。だが、後継者を育成する人が少ない。一流の人でも後継者育成ができていないのが現状です。

 

自分は数々の大会で受賞し、大学講師もし、黄綬褒章も頂きました。自分をもっと超えてくれれば、もっといい職人が出てきます。誰かが道を作ってあげて、それを超える子が出てこないと。当然、自分の実力もつけていかなければならないが、それを超えていく子が出れば、またそれを超えていく子が育つ。そうすると、この国は良くなっていきますよ!

日本の未来がなくちゃね。うちの子もそうだし、近所の子もそうだし、みんな食えなくなっちゃう。食えなくなるのは良くない。

 

【1万時間の話】

ただその仕事をしてればいいや、とかではなくてね。自分の知ってる凄い人は、1万時間を目指して、毎日仕事が終わった後も毎晩いろんな事をやっている。技術を向上させるためだけに生きている人がいて。その人が作るものは本当に凄くて、その人には勝てないなと思いました。「何でも1万時間やると、1つのプロになれる。1つをクリアできる。1万時間はその目安になる。」そう教えてくれました。

 

【夢:未来予想図② 夢を叶える工務店!】

今、5人の弟子がいますが、あと5人くらい増やして、10人の実力のあるきちんと仕事ができる人を集めた大工集団の会社を作りたいです。

皆さんからの要望に応えられる、皆さんの夢を叶えられる工務店を目指しています!

 

【誰と出会うかで人生は変わる】

出会う人によって人生は変わっていきます。まだまだいっぱい面白い人はいるので、そういう人と知り合い、出会っていきたいです。そして、何か1つでもヒントでも刺激でももらえれば、人生が良い方へ変わっていきますから。

いろいろな人と出会ってきて、人生を教わりながら、ここまできました。これからもそう思っています。

 ・・・

宮前さんのお話を伺いながら、何度も驚き、何度も頷き共感しながら、川島にこんなに素敵な人がいるんだと感動し嬉しくなりました。この師匠の元で働けるお弟子さんたちは幸せですね。

心得は『木組・人組・心組』。想いだけでなく、実践、行動、育成をしている宮前さん。

想い、理念など、もっと多くの人に広がり伝わり、若い人たちに実力のある職人さんに育って頂きましょう。

そして、もっともっとお客様の夢が叶えられる工務店になって頂きたいですね。私もお願いできるように夢を描きます。

宮前さんにインタビューさせて頂き、私も刺激を頂きました。

この刺激のスパイラルに乗って、より良い人生に変わっていく人が増えると川島町が日本がもっと面白くなっていくと思いました。 

 

【お問い合わせ先】

家の巧()

住所:川島町下八ツ林52

TEL049-297-2033

FAX049-298-3048

 

川島町地域ライター 猪鼻彩子